「未経験でも産業保健師になれる?」
「どんな資格を持っていれば採用されやすい?」
病院やクリニックでの臨床経験はあっても、企業での働き方は想像しにくいもの。そんな中で、産業保健師への転職を考えると、不安を感じる方は少なくありません。確かに経験者が優遇される傾向はありますが、「未経験=不利」とは限りません。
企業が採用で重視するのは経験だけではなく、「今後の伸びしろ」や「企業への貢献意欲」です。特に、産業保健職を増員する成長企業や、体制を整備し始めた企業では、ポテンシャル採用も十分に行われています。
この記事では、未経験から産業保健師を目指す方におすすめの資格4選と、それぞれのメリット・取得方法、さらに資格取得以外で転職を成功させるための具体的なポイントを詳しく解説します。
産業保健師にとって、労働安全衛生法に関する知識は必須です。第一種衛生管理者は、労働災害や健康障害を防ぐために事業所に置かなければならない国家資格で、従業員50人以上の職場では選任が義務付けられています。
メリット
• 健康診断の事後措置、衛生委員会運営、産業医・人事との調整など、日常業務の基礎知識を身につけられる
• 保健師資格があれば試験免除で申請のみで取得可能
• 企業側にとっても即戦力となる人材と映りやすい
取得情報
• 資格種類:国家資格
• 保健師の場合:労働局への申請のみ(試験免除)
• 試験受験時:合格率約45%、勉強時間目安100時間(4〜6か月)
• 有効期限:なし
産業保健師にとって、メンタルヘルス対策は非常に重要な業務の一つです。近年、仕事や職業生活に強いストレスを感じる労働者が増加傾向にあり、2023年の厚生労働省の調査では82.7%の従業員が不安やストレスを感じていると報告されています。また、就業不能になった理由の第1位が精神及び行動の障害であるというデータもあります。 このような背景から、働く人の心の健康を専門的にサポートする産業カウンセラーの資格は、産業保健師の専門性を高める上で非常に有効であると言えます。
参考: 全国健康保険協会「現金給付受給者状況調査(令和元年度)」
メリット
• 未経験でもメンタル分野の専門性をアピールできる
• カウンセリングの基礎から実践まで体系的に学べる
• ストレスチェック後の面談や復職支援など現場で活かせる
取得情報
• 資格種類:産業カウンセラーは、一般社団法人日本産業カウンセラー協会が認定する民間資格です。
• 方法:養成講座受講+試験合格 産業カウンセラーの資格を取得するためには、一般社団法人日本産業カウンセラー協会が実施する「産業カウンセラー養成講座」を修了し、その後の試験に合格する必要があります。試験は学科試験と実技試験で構成されており、両方で概ね6割以上の得点が必要です。
• 学習期間:6〜10か月(通学・オンライン可) 養成講座には、短期集中の6か月コースと、じっくり復習しながら学べる10か月コースがあります。
• 有効期限:5年(更新あり) 産業カウンセラー資格は、5年ごとの更新制です。更新のためには、5年間のうちに合計6時間以上の「資格更新登録研修」または「みなし資格更新登録研修」を受講する必要があります。
この資格は、働く人たちの心の不調の未然防止と活力ある職場づくりを目指し、職場での役割に応じて必要なメンタルヘルスケアに関する知識や対処方法を習得するための民間検定です。
Ⅱ種(ラインケアコース)は主に管理職が対象とされており、多くの企業で管理職の取得が推奨・義務付けられています。産業保健師の業務としてメンタルヘルス対策は重要な柱であり、この検定で職場環境の改善方法や部下の不調への対応を学ぶことは、産業保健師に必要な「組織的視点」を養うことに繋がります。
メリット
• 未経験でも職場文化やメンタルケア体制の理解を示せる
• 専門用語で管理職や人事と円滑に話せる
• 独学で挑戦しやすく、費用も抑えられる
取得情報(Ⅱ種)
• 資格種類:大阪商工会議所が主催する民間資格です。
• 合格率:約61~73% 直近のデータでは、2024年3月17日実施の第36回試験で73.2%、2024年11月3日実施の第37回試験で60.5%でした。直近3回の平均合格率は61.3%です。
• 学習期間:30~50時間程度(独学可) Ⅱ種の合格に必要な学習時間は30~50時間程度とされています。独学で1か月から2か月弱で合格した例も報告されています。独学での取得は可能ですが、個人の学習ペースによって期間は異なります。
• 試験形式:マークシート、70点以上合格 試験は選択問題(マークシート方式)で実施され、試験時間は2時間です。100点満点中70点以上の得点で合格となります。
「健康経営®」は、従業員の健康を単なるコストではなく経営資源として捉え、経営戦略に組み込むことで、企業価値の向上を目指す考え方です。経済産業省もこの考え方を推進しており、東京商工会議所が経済産業省からの委託を受け、2016年から「健康経営アドバイザー」の育成・認定プログラムを実施しています。健康経営アドバイザーは、企業の健康施策を企画・推進するための知識を持っていることを証明できる資格です。
メリット
• 経営課題にも関心を持つ姿勢を示せる
• 企業全体の健康づくりを支援する幅広い視点を獲得できる
• 短期間で取得可能(eラーニング+効果測定)
取得情報(Ⅱ種)
• 資格種類:健康経営アドバイザーは、東京商工会議所が主催する民間資格です。
• 方法:オンライン研修修了+効果測定(70%以上) 東京商工会議所が開催するeラーニング研修を受講し、その後の効果測定で70%以上の正答率を達成することで認定されます。受講料は8,800円(税込)で、テキスト代、動画受講料、IBT(インターネットベースのテスト)受験料が含まれます。
• 認定期間:2年(更新あり) 健康経営アドバイザーの認定期間は2年間です。資格を維持するためには、2年ごとに研修を再受講して更新する必要があります。
資格は有効な武器ですが、それだけでは十分ではありません。企業は資格ありきで人材を採用するわけではなく「一緒に働きたい人」を探しています。未経験からの挑戦では、次の3つの行動が効果的です。
①臨床経験を産業保健に置き換えて説明する
例:患者の生活背景を踏まえた支援 → 従業員の職場背景を理解した面談
チーム連携の経験 → 衛生委員会や人事との協働
②企業や業界への理解を深める
「なぜこの会社なのか?」に答えられるよう、企業HPやIR情報、業界動向をリサーチする。
③転職エージェントを活用する
非公開求人や企業ごとの面接傾向、条件交渉など、個人では得にくい情報を入手できる。
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今回紹介した4つの資格は、未経験から産業保健師を目指す際のアピールポイントになります。しかし、資格はあくまで入り口。
最も大切なのは、「産業保健師として企業と従業員を支えたい」という明確な想いと、それを形にする行動力です。
• 興味のある企業を調べる
• 求人をこまめにチェックする
• エージェントと連携して情報を集める
こうした主体的な行動と資格取得を掛け合わせれば、未経験からでもあなたの可能性は大きく広がります。未来の職場で輝く自分をイメージしながら、一歩を踏み出しましょう。
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