「最近、腰痛を訴える社員が増えてきた」
「在宅勤務が続いてから、腰痛による休職者が出た」
「腰痛対策といっても、何をすればいいのか分からない」
このような声を、人事担当者の方からよく伺います。
厚生労働省の調査によると、腰痛は業務上疾病全体の3割以上を占めるとも言われ、業種・年齢を問わず誰にでも起こり得る職業性疾病です。特に、在宅勤務やPC作業の長時間化により、以前よりも“静かに進行する不調”として注目を集めています。
本記事では、腰痛のリスクを正しく理解し、企業としてどのように対策すべきかを人事の視点から解説します。
腰痛は「姿勢の悪さ」や「運動不足」など個人要因に見えがちですが、職場環境や業務設計が原因となるケースも少なくありません。以下のような職場は特に注意が必要です。
• 長時間のデスクワークが続く
• 重い物を持ち運ぶ作業がある
• 同じ姿勢での作業が多い
• 休憩が取りづらい
加えて、ストレスや職場の人間関係など心理社会的要因も腰痛に影響するとされており、身体的なケアだけでは改善しないケースもあります。
つまり、腰痛は“個人任せにできない”職場の課題。
人事が主導し、予防・対策の仕組みを整えることが重要です。
1. 作業環境の見直し
椅子や机の高さ、モニターの位置、照明の配置など、身体に負担の少ないレイアウトを整備しましょう。可能であれば、エルゴノミクス(人間工学)に基づく備品の導入も効果的です。
2. セルフケアの促進
社員自身が日常的にできるストレッチや軽い運動、姿勢の意識をサポートするツール(例:ポスター・動画・研修)を提供しましょう。管理職を巻き込んだ職場内キャンペーンも有効です。
3. 専門職の活用による早期対応
不調を感じた社員が早めに相談できる窓口があることで、重症化や休職のリスクを減らせます。保健師や理学療法士、産業医など専門職と連携した個別対応体制の整備が鍵です。
腰痛対策というと、どうしても器具や運動など“モノや情報”に偏りがちです。
しかし実際には、社員の声を丁寧に拾い、個々の状況に応じた支援を行う「人の支援」が欠かせません。
保健師は、社員との面談やヒアリングを通じて、腰痛の背景にあるストレスや生活習慣、業務負荷の問題にも気づくことができます。さらに、管理職との橋渡し役として、予防から復職支援までの継続的サポートも担う存在です。
腰痛は、軽視すると離職や労災トラブルにつながるリスクの高い健康課題です。
しかし、職場環境の工夫と専門職の支援によって、未然防止や早期対応が十分に可能な問題でもあります。人事が先頭に立って、「腰痛は仕方ない」とあきらめず、働き続けられる職場づくりを進めていきましょう。
▼腰痛対策を“制度”から“実行できる支援体制”へ
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